中国人富裕層が心惹かれる場所

中国人から見れば、中国よりも今の日本のほうが、全国至るところに歴史のある老舗や古いものが保存されていて、これが「うんちく好き」「歴史好き」である知的な富裕層の目に、大変魅力的に映るのでしょう。中国人富裕層だからこそ心惹かれる場所は、ほかにもたくさんあるのです。たとえば孫文や周恩来などの政治家は、日本で暮らしたことがあります。その足跡が各地に残っているのです。孫文が足繁く通っていた東京・日比谷公園内にある松本楼は明治36年(1903年)に建てられた洋食レストランです。店内には孫文夫人の宋慶齢がよく弾いていたピアノが今も大事に保存・展示されているのです。ここを訪れた中国人の心の琴線に触れると聞きます。中国の著名な小説家、魯迅が学んだことがある宮城県の東北大学などにも足を運び、旅の途中で書物を読み返したりする人もいるそうです。また、古くは秦の始皇帝の命により、不老不死の仙薬を求めて日本にやってきた徐福という伝説の人物がいます。彼が歩いたといわれる場所は佐賀県佐賀市、新宮市、鹿児島県出水市など、全国各地に散らばっています。「徐福伝説」と呼ばれているのです。私の友人の“徐さん”は以前、自分と同じ姓の徐福とゆかりのある場所を訪ねて歩くユニークな旅をしていました。「こういう旅の仕方もあるのか」と実感し共感したことがありました。

今、中国人富裕層は世界中を旅行して歩いています。しかし、ここまで歴史的に深い関わりがあり、まるで身内のような親近感を覚えるのは日本だけだと言えるでしょう。日本について事前に学び、自分が興味のある場所を探訪し、ショッピングだけでは終わらない中身の濃い、充実した旅行をしているのです。

中国人観光客は間違いなく増えていくインバウンド

中国人観光客の「爆買い」が新語・流行語大賞を受賞し、日本人の注目を集めたのは2015年でした。早いもので、あれから2年以上の歳月が経ちました。「爆買い」は中国人観光客を形容する言葉として、あっという間に定着しました。一般の人が日常会話で「今日、お菓子を”爆買い“しちゃった」などのように使用するほど、日本人にとって馴染み深い単語となったようです。その「爆買い」に象徴される訪日中国人観光客は年々増加の一途を辿っているのです。03年には年間でたった45万人に過ぎなかった中国人観光客ですが、10年後の13年には約131万人となりました。爆買いが流行した15年には約499万人です。そして17年は役735万人にまで増加しました。訪日外国人観光客の約4人に一人が中国人という計算になるのです。18年も継続して中国人観光客数が増加していくことは間違いないと思われます。しかし、爆買いが騒がれた翌年、16年の後半からは、早くも「爆買い後」が世間の話題となりました。それは、爆買いの終焉、という意味です。そして、「モノ消費」から「コト消費」への移行という、大きく分けて二つのトピックです。私は、爆買いが最も騒がれた1512月に『「爆買い」後、彼らはどこへ向かうのか?』という本を出版しました。ちょうどその年の2月、春節(中国の旧正月)期間中の約一週間だけで約45万人の中国人観光客が訪日し、約60億元(約1140億円)を消費するなど、急速に爆買いがクローズアップされ始めました。しかし、本を出版したのは、その年の年末でした。爆買いが最高潮だった時期と重なっていたのです。それなのに、「爆買い後」をテーマに本を出版したため、多くの人から怪訝そうな顔をされました。